日本の蓄電池技術の優位性

日本の蓄電池技術の優位性

蓄電池市場の今後の予測

蓄電池市場の今後の予測

これからの電子機器の益々小型化する電源として、より小型・軽量、長寿命の蓄電池が求められています。
また今後、急速に普及すると考えられている電気自動車やハイブリッド自動車、あるいは次世代送配電網(スマート・グリッド)に重要な役割をはたすものとして蓄電池産業の世界的な市場の拡大に期待が高まっています。
経済産業省は、2011年度に世界市場規模は約5兆円から10年間で4倍の約20兆円になると予測しています。そして、日本企業には、十分な競争力があり、この間にグローバルシェアを2割から5割に引上げる戦略シナリオを提示しています。

蓄電池のシェア推移

蓄電池のシェア推移

この分野では、2005年頃までは長く世界トップシェアを誇り、蓄電池技術の優位性は海外メーカーを圧倒してきましたが、近年では、韓国など他国が技術的に迫り、更に低価格化を推し進めシェアを伸ばしてきて日本は世界のトップシェアの座から転落しています。
今、こうした状況を受けて、一時期、日本が圧倒的な強み、シェアを誇った液晶パネルや半導体メモリーDRAMのように、後、数年で競争力を大きく失うのではないかという懸念が囁かれています。その理由はシェア低下に如実に表れています。
2005年前後に日本は、ニッケル水素電池ではシェア74%、またリチウムイオン電池ではシェア57%、ニッケル・カドミウム電池では51%を占めてトップシェアでしたが、2011年度は、リチウムイオン電池市場のみのデータではありますが、韓国40%、日本35%となってこの年に初めてシェア2位に転落しています。
2012年度の第一四半期では、更にその差が広がっています。

日本メーカーの戦略と韓国メーカーの攻勢

蓄電池の市場規模が広がることが期待されるだけに、技術的な優位性とコスト競争力を強化していく必要性があります。
小型民生用のリチウムイオン電池では、コスト的に厳しい日本メーカーは、電気自動車などの車載用や住宅向けの定置用の大型蓄電池など中大型リチウムイオン電池の開発にシフトしています。
この分野では、まだ技術開発の余地が大きく日本メーカーの優位性が発揮できるためです。

しかし、日本メーカーは大幅な円高によって、経営が厳しく研究開発に大きな投資ができない現状が続いてきました。一方、韓国メーカーは、中大型リチウムイオン電池でも攻勢が強く、例えばLG化学は、電気自動車への蓄電池供給生産体制を強化し、更に2013年までに約1400億円を追加投資することで生産力をアップし、2015年までに2012年第一四半期で世界3位から世界トップになることを目指しています。
リチウムイオン電池で世界トップシェアのサムスンは、中大型ではLG化学より出遅れていますが、やはり投資意欲は強く2020年までに車載用リチウムイオン電池の設備と研究開発に4500億円を投資する計画を持っています。
韓国製品がシェアを伸ばしているのは、日本が技術開発力で劣っているわけではなく、韓国政府の税金、補助金、通貨安などの優遇策を受けていることが主なので、現状のアベノミクスによる円安が安定して続けば形勢は再逆転する可能性があります。

今後期待できる再生可能エネルギーと蓄電池の普及条件

太陽光発電などの再生可能エネルギーは、気候や夜間など日照量の変化によって発電量が変動するため、安定して利用できるようにするには、蓄電池に蓄えて利用することが必要となります。
また、電気代が安い夜間電力を蓄えて昼間に使うなどエネルギーの効率的で有効な利用が蓄電池の設置によって可能になることから、今後大いに普及が期待されています。
その際、性能に加えて低価格化、寿命・耐久性、安定性・信頼性が重要となるので、為替レートによる価格差を克服して、国際的な競争力を持つためには、これらに関して優位性を発揮することができるようにしていくことが非常に重要です。

技術革新の可能性と方向性

蓄電池の中で、マイナス極に黒鉛、プラス極にコバルト酸化物系を使用し、電解質(液)に有機電解液を使用しているリチウムイオン電池は、現状でも完成度は高いのですが、まだ、マイナス極やプラス極、電解質(液)に新しい材料を見つけたり、容器や構造、製造工程の工夫などをしたりすることで、性能革新、低価格化が他の蓄電池に比較するとあると言われています。
また、電気自動車などには充電一回分の走行距離を延ばすことが、まだまだ求められていくでしょう。
その場合、リチウムイオン電池では技術的に限界がくるので、別の新しい蓄電池を開発しなければなりません。
現在、部品・材料として「多電子移動電極材料」、「硫黄正極」、装置として「金属空気電池」、「全固体電池」などが考えられています。
性能が高まるほどに、安全性・信頼性が強く求められるため日本にとっては得意な技術を活かすことが可能です。
蓄電池は、携帯可能な電子機器、自動車などの大型の移動体、再生可能エネルギーの蓄電の3用途で需要が伸びてきていることから、これらの用途に適した性能を持つこともまた必要です。
尚、携帯可能電子機器や自動車でも電気自動車の用途には、性能として、蓄電池からどれだけエネルギー量を取り出せるかというエネルギー密度(重量あたり、どれくらいエネルギーを蓄えられるのか)がより重要であり、自動車でもハイブリッド自動車では、蓄電池からどれだけパワーを取り出せるか出力密度(重量あたり、どの位のパワーを出せるのか)がより重要となり同じではありません。そして、再生可能エネルギーの蓄電には、低価格化や長寿命がより強く求められます。また医療用機器には、安全性や信頼性が最も求められるなど用途によって最重要な性能は異なります。

今後の研究開発の課題

最近は、蓄電池に関する新しい技術革新が産まれ難くなっていると言われています。
そのため、新しい技術革新を産むには、蓄電池の従来の研究領域とは少し離れた分野の研究者などを結集することが必要と叫ばれています。
また、蓄電池は電池の中の反応がどのように起こっているのかなどの非常に基礎的なことが未だ、十分に解明されていません。
蓄電池の性能を上げるために、どのような材料がもっとも適しているのかなど、基礎的な研究を積み上げることで解明され、高性能な蓄電池が開発可能となります。